2015/01/27

雪山でのモラルとマナー 【赤井川編】


シーズンも中盤を迎え、みなさん楽しくバックカントリーライフを過ごしていることと思います。しかし、そんな陰で最近、赤井川周辺ではいくつかの遭難事故やトラブルが発生しています。これらは単に経験不足から生じるものばかりではなく、経験者の不注意に起因するものや、海外を含む撮影クルーの確信犯的行動によるトラブルも多くみられるようになりました。

僕らガイドはこういった事故やトラブルを未然に防ぐために、山での行動学やマナーについての啓蒙活動にも力を注いでいますが、一部のスキーヤー、スノーボーダーの身勝手な行動により、今まで地道に築いてきた地域の人たちやスキー場、警察、消防関係者などとの信頼関係も簡単に壊れ、場所によっては入山や立入禁止などの措置も講じられ始めています。

バックカントリーだからリスクが高いのではなく、何も考えず、何の準備もせずに山に入れば当然リスクは高くなります。特に、未経験者や仲間を誘ってバックカントリーに入るリーダーや、海外からの撮影クルーをアテンドする人たちは、こういった現状をしっかり把握して、啓蒙する立場になってもらえればと思います。

デッカいけれども狭い北海道、人気のエリアではみんなで斜面をシェアしているという意識をしっかり持って、世界に誇る北海道的バックカントリーカルチャーを築いていければ最高ですね!

というこいとで、最近気になるいくつかの懸案事項を以下にあげておきます。心当たりのある人はしっかり読んで、山に入る人たちの共通認識として理解していただければと思います。



キロロスキー場からアクセスしてBCへ入る人たちへ
ロープをくぐってリフト回しをする人たちも含め、最近コース外での遭難・救助要請が増えています。キロロスキー場の場合、1,長峰裏、2,ゴンドラ終点と朝里第2Aからの余市岳方面、3,余市第2リフト始点からの1218方面、4,マウンテン駐車場からの1107、AKフェイス方面、5,ホテルからのピアノ裏の上記5か所が主なアプローチポイントとなります。はじめからハイクして入る2,3(余市岳~西尾根方面)は別として、長峰、駐車場アプローチに関しては以下の点を注意して入山するようにしましょう。

長峰:コース途中から右トラバースで裏に入らないように!この周辺で最も簡単にアプローチできる反面、そのトレースを追ってのプチ遭難が頻発しています。スキー場パトロールが出動しての捜索時には大小関わらず、数十万~百万円単位の費用が掛かることを覚えておいてください。長峰に限らずトラバースinは極力避けましょう。

1107、ピアノ裏方面:スキー場やホテルの駐車場はお客さんのためのものです。リフトや施設も使っていないのに堂々と車を停めて行く人たちがほとんどですが、キロロの好意で使わせてもらってるということを忘れずに。たまにはレストランや風呂使ってくださいね。駐車場での立ちションはもちろん、週末の混雑時に宿泊者専用駐車場に停めたりするのも避けてください。早い時間帯にコースを横切る場合は、圧雪の邪魔にならないようにすることも最低限のマナーです。

ロープをくぐってコース外滑走をする人たちへ:キロロのパトロールの方たちは、良くも悪くもパウダー愛好者の気持ちを汲んでくれています。みなさん自己責任というコトバをよく使いますが、実際にロープをくぐっている人たちの装備を見てると、沢に落ちたり、道迷いの場合は確実に人の助けを求めることでしょう。最近は奇声を発して堂々と線架下を滑る節操のないパウダージャンキーも多く見られます。自己責任とは、起り得るリスクを把握し、どのような事故が起こってもセルフレスキューで自己完結できることをいいます。連れて行く責任、自分の付けたトレースの責任も含め、罪悪感をもってロープの向こう側に消えていくようにしましょう。


登山届の必要性
これを出したから事故や遭難がなくなるといことではないですし、もちろん義務でもないですが、ガイドツアー、一般登山、撮影問わず、山に入るための最低限のエチケットとして考えてください。特に雪山は直前に計画を変更することが多いので、出来る限り出発直前に最寄りの警察地域課にメールで送ることをお勧めします。先週も尻別岳周辺で雪崩事故(その後未確認)の一報があり、同じエリアに入山している僕のところに警察から確認の連絡がありました。その日は他にも何人かのパーティーが入山していましたが登山届を提出していたのは僕らだけとのこと。たとえ仲間同士だとしても、リーダーを決めて、少なくとも入山ポイントと行動予定、同行者の氏名と緊急連絡先くらいは把握しておきましょう。それが万が一の場合の有効な情報にもなるし、山に入る者の責任でもあると思います。雪山遭難では初動捜索がもっとも重要となります。登山届のひな形や提出方法が知りたい方は直接メッセージくれればお教えします。


滑走禁止エリアと駐車場問題
海外からの撮影クルーが大挙して押し寄せている今シーズン、滑走禁止エリアでの撮影や違法駐車によるトラブルが各所で再発しています。これはマナー以前の問題であって、滑る人たちのモラルが問われます。100歩譲って、もしロードショットを撮りたいのなら、交通量の多い国道や直接道路に崩れ落ちるような場所ではなく、人目をはばかり車通りが少なく、直接道路に影響のない場所で自己満足に浸ればよいでしょう。また北海道の駐車場事情として、除雪回避所や除雪終点、路肩スペースなどは、公道、私道ともに除雪作業が最優先です。ここでの立ちションも論外ですが、吹雪や降雪時には駐車を控えたり、人数が多い場合は便乗して車の台数を減らすようにしてください。北海道ガイド協会では、バックカントリーや雪山登山愛好者のために、人気スポット近くに駐車スペースを作ってもらったり、パーキングエリアに置けるように働きかけもしています。無用なトラブルによってこういった活動が妨げられることのないよう、ドライバーの方を含め細心の注意を払うようにしましょう。また、海外撮影クルーをアレンジする関係者各位は、金も使って気も使え的なスタンスでアテンドしてください。トップライダーだか、有名プロダクションだか、こちらは知ったこっちゃないですが、まずはローカリズムをリスペクトしてから、思う存分パウダーを楽しめと。

ハイクラインとトラバース
まぁ、これは状況にもよるので、一概には言えないですが、雪が良い週末などは人気ポイントでは多くの人たちがパウダーを求めて一斉に山に入ります。上級者もいれば初級者もいるし、ガイドツアーもあれば撮影や個人、仲間で楽しむ人たちなど、とにかくレベルも目的斜面も違う人たちが多く入山します。そんなときは、出来る限り多くの人たちが楽しめるように、ハイクラインと滑降ラインには充分気を使いましょう!あなたがジグを切っているその緩い斜面は、初心者にはうってつけの斜面でもあるのです。あなたが楽に登り返すために滑りこんだトラバースラインは、後続者が狙っているラインなのかもしれません。より多くの人がストレスなく、笑顔で世界一のパウダーを楽しむためには、一人一人の気遣いが大切かもしれませんね!


以上、赤井川より業務連絡でした。それではみなさん、引き続き安全運行でハッピーパウダーライフをお過ごしください!!